カテゴリー「小説」の4件の記事

2012年5月24日 (木)

小説の創作に関する書籍色々【今余裕が無いので文献リスト改訂のみ】

【内容の追加・修正待ち】

ただ読んだだけでは、自称評論家になってしまいます。読んでわかった気になるのが一番怖いです(自戒を込めて)。

・入門的

・プロットの細部を構築する上でどのようなことを考慮するべきか?

私自身にも勿論言えるのは、はじめに頭でっかちになりすぎても書けないです。でも、知識として吸収できるうちにしておきたいです。

2012年3月18日 (日)

【プロット】入門編【参考図書】

【編集中】ちょっと体調不良です。
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Dscf0008

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2011年5月20日 (金)

『神創造記ヨクト1(ワン)』

 「えー。ここで彼は言いました。『きみは何者だい? 人に追われているなんてただ事じゃないだろう』と……」

 授業中、教師が教科書を読みあげている。

(ブルッブル、ブルルル)

 国語の授業中、少年の携帯に着信があり学生ズボンから取り出した。

 少年は携帯を確認すると、手を挙げて前に立つ教師に向かい声をあげる。

「先生!」

「ん? 大峰くんどうしたんだい?」

 教師が少年に向かい振り返ると、教室にいた生徒たちも一斉に彼のほうを向いた。

「し、召集がかかったので早退します!」

 少年は少し緊張したように若干顔を赤くしながら立ち上がり答える。

「おお、そうか、頑張ってな」

 教師は取り立てて珍しくもないようなそぶりで、彼に言葉をかけた。

「大峰、頑張ってこいよ! ヒロトくん頑張ってね」

 クラスの生徒たちも気軽に声をかける。

「で、では。い、行ってきます」

 ヒロトと呼ばれた少年は教室を出て学校の門へと急ぐ。

(なにも授業中に呼ばなくたっていいのに)

 まだ顔を赤らめながら階段を下ると、学校の門に乗りつけられていた黒塗りの高級車に乗り込んだ。シートに座るや否や女性の声が聞こえた。

「転送します」

 その声とともに少年はコクピットに制服のまま転送された。

「ヒロト遅いよ! もう、敵は近くにいるのにー」

 コクピットの上の方から男の子の声がする。

 その声はまだ幼い子供のように甲高い。

「仕方ないだろ! 授業中だったんだから……」

 少年は口をとがらせながら声に向かい反論した。

「そうよ。遅いわよ! 召集がかかったらさっさと来なさい」

 少年の顔の前に小さな小窓のように映像が映し出され、女の人が怒っている。

 ブロンドのショートヘアーにやや釣り目がかった目をした、その女性はまくしたてた。

「ヨクト1。領域内ギリギリの中継センターに転送! カタパルトから射出するからね。十秒間の実弾射撃で援護はするから、あとは、よ、ろ、し、く!」

 笑顔でウインクの後、画面は消えた。

「よろしくって! 敵の数も正体も分からないんじゃどうしたらいいんだよ!」

 少年は自分の胸元のパネルに向かって両拳を打ちおろす。

「そんなに怒らないでよ。妨害がひどくて分からなかったんだってさー」

 子どものような声は、少年をなだめるようにコクピットに響く。

 少年に話しかけた女性は、ふっとため息をつくと両腕を前に組んだまま席に腰かけると右隣にいる女に向かい言った。

「エリカ。敵の情報はまだつかめないの?」

 声が苛立っている。

「リサ、そんなに怒ってても仕方ないでしょう。敵は一体ね。まだ超望遠での映像しかつかめてないけど、特に装備らしきものは見受けられないわ。あと、天気は良好。ヨクト1には好条件ね」

 エリカと呼ばれた長髪メガネの女性は、最初は冷静な声で、そして、最期はうれしそうにも思える声で耳元の黒髪をかきあげながら答えた。

「天気良好ね……」

 少年に命令した女性は部屋の前面のモニターをにらむ。

 女性のいる部屋には十数名の男女が作業にあたっており、前面と左右そして部屋の天井がそのままモニターになっていて、エリカと呼ばれた女は隣に立ってPC画面を眺めていた。

「ヨクト1転送完了! カタパルトにセットしています」

 部屋の中で自分の画面に向かい作業している女性オペレーターからの報告が入る。

「準備完了後ただちに射出!」

 リサはエリカ以下全員に聞こえるよう大きな声で言った。

 前面のモニターは中継センターの物と切り替えられ敵を正面でとらえる。

 

 コクピットのヒロトはオペレーターの声を聞きながら唇を噛んでいた。

 心臓の動悸は激しく、それを抑えようと口を大きく開き深呼吸しようとするが、息遣いは早いままだった。

「ヨクト1射出します。糸電話はなるべく切らないよぉに!」

 ヨクト1と呼ばれた巨大な人型兵器には背中にいくつもの種類の砲身と「糸電話」と呼ばれたワイヤーをつけている。

 妨害電波のため直接的につながっていないと会話ができないため、糸電話と呼ばれている。

 一端敵のいる場所に到達すると、リサたちのいる指令室との会話は容易ではない。

「いつもいつも無理ばっかりっ!」

 ヒロト自身は争いは嫌いだったが、彼がヨクト1には一番相性が良いという理由で戦わされている。

「射出!」

 声が聞こえると、強烈な加速度から来る重圧が彼を襲う。

 必死に目を開き前を見た。

 敵がどんどん大きくなり近付いているのが分かる。

 相手に味方からの援護射撃があたっているのだが、表面に火花が散る程度で、被害を受けている気配はない。

「敵、損傷なし!」

 オペレーターからの声が耳に響く。

「やっぱりダメかぁー」

 ヨクト1が緊迫した雰囲気を感じていないように残念そうに言う。

「ちっくしょう! ヨクト1近すぎるよ」

 ヒロトは天井に視線をやり彼を包んでいる機械に向かい叫んだ。

「そんなこと言っても、ムリー。放物線状に跳んでいくだけー」

 緊張感のない声がする。

 全長三十メートルの巨人は空を切る。

 その姿はゴツゴツとした塊のような黒い皮膚で覆われており、額はくちばしのように突き出している。

 ヨクト1は肩で相手にぶち当たる。

「痛いよう。すぐに帰ろうよー」

 ヨクト1が体当たりした瞬間からヒロトの左肩にも鋭い痛みが走る。

「300ミリ、いや、150ミリ弾発射!」

 ヒロトが口にするとヨクト1の背中にある大口径の二つの砲身が揺れ、小さいほうの砲身が右肩から顔を出した。

 砲身から連発して弾丸が発射され薬きょうが飛んでいく。

「敵、損傷軽微です!」

 オペレーターからの報告が入る。

「ヒロト、ダメみたいー。痛いよー」

 ヨクト1は左肩を押さえながら言った。

「一時離脱! 体制立て直して!」

 リサからの声がする。

 右足で蹴って後ろに下がろうとするとが、敵の両手が浮いていた左足首をつかんで離さない。

 ヒロトの目の前に影が走った。

 敵の装備していた砲身が振り下ろされ、ヨクト1の胸を狙おうとしている。

「エリカ! 話が違うじゃない」

「背中に隠れてて見えなかったのよ……」

 ヨクト1は必至で顔の前に下ろされそうとするのをこらえる体制をとっている。

「こんなの当たったら死んじゃうよー」

 砲身が下りてくる力が強く、ヨクト1の両腕がブルブルと震えている。

「オートゲイン解除! ヨクト1押し返せ!」

 ヒロトが叫ぶとヨクト1の目が光り、砲身を捻じ曲げるように押し返していく。

「火器回して! お前は足で距離を取って!」

 左足首を持たれたまま右足を突っ張り、ヨクト1は宙づりのような体制になった。

 組体操の「トンボ」に近い。

 ヒロトはその間も画面に映し出された敵のどこを打てばよいか探している。

 目は上下左右に激しく動き、その視線にあるモニターの十字に赤く光るマーカも、画面のあちらこちらとそれに連動した。

「ヒロトはやくしてー」

「うるさい。まずここっ!」

 比較的細みの砲がセレクトされヨクト1の右肩から顔を出し連射する。

「敵、眼球と思われる個所破損! 光が消えました」

 オペレーターの少し喜んだような声がした。

「まだ動くわよ!」

 モニターをにらんでいたリサが、立ち上がりながら誰あてにでもない声を発した。

「ヨクト1。離れてっ」

 ヒロトも必死で声をあげていた。

「力がもう入らないよぅー」

 ヨクト1の声が小さくなっていく。

「長時間力を出しすぎました! パワー、レベル15から6へ低下、まだ下がり続けます」

 オペレーターからの声が悲鳴のようにヒロトには感じた。

「敵の胸が開くわよっ」

 エリカが通信用のマイクを持って叫んだ。

 敵の胸から光が漏れていく。

 閃光が走っり画面全体を光が包む。

「ヒロト!」

 リサの声が部屋中に響く。

 指令室のモニターは、光のためにカメラの映像が飛んでしまい、真黒になっていた。

「サブカメラ起動。画面回復します」

 指令室のモニターには、足首をつかまれながら、だらりと地面に倒れたヨクト1の姿があった。

「ヒロト……」

 リサの声は震え呟くようだった。

「いっけえぇ!」

 ヒロトの声とともに、ヨクト1は起き上がり、その間に最大口径の砲身が左肩にセットされた。

「これで……」

「終わりだー(しんじゃえー)」

 ヒロトとヨクト1同時に声があがると、砲弾が発射され敵の胸板を貫き地面から爆風が噴き上がる。

「ヒロト、やったねー」

 ヨクト1は飛び跳ねるような歓喜の声をあげた。

「でももう、動けないー」

「ちょっと、ヨクト1! しっかりして」

 ヒロトの声も虚しくその前面のモニターは消え、胸元のパネルだけが光っている。

「リサさん。回収お願いします。太陽光からのエネルギー変換追いつきません」

 ヒロトはがっくりと首を垂らしながら、すまなそうに頼んだ。

「心配させやがって! 帰ったらお仕置きよ。だいたい力の使い方が下手くそだから、そういうことになるのよっ!」

 パネル越しに怒鳴りつけるリサの顔は喜んでいた。

 

「ヒデルー!」

 幼いヒロトはまだ二十代くらいの男性を呼びながら、うれしそうに抱きついた。

「ヒロト、幼稚園は面白かったかい?」

「うん! みんなでお遊戯したり。楽しいよー!」

 ヒデルの問いかけにヒロトは大きくうなずいて答える。

「そうか、良かったな。今日はこのまま研究所に行くからな」

 ヒロトを抱いて車の助手席に乗せると、ヒデルは車に乗り込み走り出した。

 ツードア・クーペのスポーツカーは高音をあげている。

 ヒロトはうれしそうに、すぐにラジオをつける。

 それを横目でチラッと眺めてヒデルは正面を向きなおした。

「はい。『りょうこのスリットスカート』、今日も始まりました。みなさん、お元気でしたか?」

「元気だよー」

 ラジオの声に無邪気に答える。

「この頃は世間も物騒になってきました。新政府に対してのテロが多発しています。テロやデモ活動に関する情報は、情報センターからこのあとお伝えします」

「新政府か。あちらさんも今頃忙しいんだろうな……」

 ヒデルは何かを思い出しているかのように呟いた。

「ボクたちはしんせいふってのとたたかってるんだよねー?」

 ヒロトはヒデルを見上げながら元気に言った。

「ああ、そうだ。悪い奴らだから懲らしめないとな。そのためにもヒロトはもっと勉強するんだぞ」

「うんっ!」

 車はあまり飾り気のないコンクリート壁むき出しの建物に着いた。

 急ごしらえなのか、壁の色がまちまちで補修した跡も目立つ。

「さあ、着いたぞ」

「今日は寄り道せずに来たようね」

 白衣を着た若い女性が声をかける。

「遅れてくるのはたまにだろ、エリカ先生」

「予定通りに行動してもらわないと困るのよ。今は大事な時期なんですからね」

「はいはい。分かりましたよ。ヒロト先に入ってなさい」

「はーい」

 返事をすると、走って建物に消えていくヒロトを見ながら、ヒデルはエリカに顔を向けた。

「あと、どれくらいで対新政府の兵器は完成するんだい?」

 エリカの頬に手のひらを当て親指で唇をなぞりながら問いかけた。

「まだまだ先。十年近くかかるかもね、ヒロトも含め成長しないと。そうしたらこんな建物じゃなく、もっと大きなものを作ってもらわないと」

「そんなにあの子をだまし続けるのか? 成長してくれば世の中ってものが見えるようになって来る。自分で考えるようになる。こっちに銃を向けるかも知れないんじゃないか?」

「それをさせないために、あなたが育てながら教育してるんでしょう? ヒデル博士」

 そう言うと、唇を触っていた親指を噛んだ。

「ああ、そうでしたね。何て言ったって、あの子とヨクト1は『奇跡』ってコードネームで呼ばれているんだから」

 噛まれた指を振りながらヒデルは答えた。

「今のコードネームは『神』よ。あの子とヨクト1に頼らないと生きていけない日がやってくるから。ヒデルさんもしっかりしてよね、実質的な独立都市の軍司令官なんですから」

「俺はそんな器じゃないよ」

「あちらはコンピュータ、こっちは人間で対処するしかないのよ。そもそもヨクト計画の前進になった研究にはあなたも大きくかかわっているんですから」

 エリカは前髪をかき上げながら、話を打ち切りたそうに振り返ると、ヒロトの消えた建物に入っていく。

「『奇跡』や『神』。そんなものを造りたかったのかい? あなたは……」

 空を見上げ呟くと、ヒデルは別の建物に入って行った。

「さあ、手を挙げて! そう、グー、パー、グー、パーさせて!」

 ヒロトは大きな水槽のような物の前で、自分も同じように手を挙げながら喋りかけている。

 頭に配線のつながれたヘルメットのような物を被り、それは水槽の中の赤ん坊につながっていた。

「ヒロト、ヨクト1は元気そう?」

 エリカは前かがみになり、目の高さをヒロトに近づけながら訊いた。

「うん、元気だよー。でも、幼稚園のことをおしゃべりしてたら、うらやましいって。ヨクト1も幼稚園にいけるー?」

「そうねぇ。それはちょっと無理だけど、ヒロトが代りにいろんなことを教えてあげてね」

「そうかぁ。いけないのか……。その分ボクがいろんな勉強しなくちゃねー!」

 無邪気に答えるヒロトに、少し悲しそうな笑顔を向けるエリカだった。

 それから日が流れ、ヒロトとヨクト1と呼ばれる赤ん坊は成長していった。

 ヒロトは人間として、ヨクト1は人の形をしたエイリアンのような姿となって。

 ヨクト1を入れた水槽も建物も大きくなり、やがて大きなビル群が建設された。

 大きなプールの中に全長二十メートルのヨクト1が浮かび、その肩にはヒロトが立っていた。

「ヨクト1、そう!50ミリ機関銃をだして!」

「こうかなー?」

 ヒロトが笑顔で指示を出すとヨクト1は答える。

 背中にぶら下がっている砲身のうち一つが右肩に固定された。

「そう、あの的を一緒にねらうんだよ」

「いくぞ。せーのっ!」

 水中で的めがけて照準を合わせ発射する。

 赤い光が発射され的に点をつけた。

 まだ、八歳の頃のヒロトがいた。

2011年1月29日 (土)

『皇帝・妃の選びかた』①

 貴族階級と魔法で統治された世界があった。

 その世界は三つの強国と、それに属する数百の国で形成されており、小規模な紛争を抱えながらも、外見的な平和がもたらされていた。

 

「ここが寮か……。まさか領主になってまで学校に通うことになるとはな」

 背の高い、その身なり仕草に品をを漂わせる青年が門の前に立つ。

 門を開け歩いていると建物の中に入っていくと、入口に広間があり、若い女性が一人立っていた。

 まだ青年には気づかずに部屋の掃除をしている。

 その艶やかな服装やブラウンの長い髪に髪飾りから下働きの女ではないことがうかがえた。

「あの、すみません」

「はいっ。何でしょう?」

 声をかけられ驚いたように青年をややボーっとした目で見ていた。

「わたしの名前は、ハルト・カスタードと申します。寮監かどなたかいませんでしょうか?」

「お待ちください。姉を呼んできます!」

 そう言うと女の子は走って行って寮の中に入っていく。

(姉? 寮監の息女とは思えない身なりだが。まあいい、やはり可愛らしい顔や声をしていたな)

 ハルトと名乗った青年は、先ほどの女の子の顔を思い出しながらしばらくその場で待っていた。

「カスタード公爵様ですね。よくいらっしゃってくださいました。わたしは寮長のライム・プディングです」

 振り向くと呼びに行ってくれた女の子と同じような顔立ちや髪の色やをした女性が立っていた。

(さっきの女の子に良く似ている、こちらはやや厳しい目鼻立ちだな)

「はい。今日、この国につきました。わたしの荷物は着いているでしょうか?」

「ええ。先日着いております。寮の中もあわせてご案内いたします」

 ライムという名の女性の後ろからハルトはついて行く。

「わたしは、便宜上寮長をしていますが、この寮で生活し、学校もご一緒させていただきますわ。寮監は通いで来ている者なのです」

「そうですか、よろしくお願いします」

「ご存じかも知れませんが、男性はカスタード様を含め三名、女性はわたしも入れて二十八人です」

「はい。そうらしいですね。わたしのことはハルトと呼んでください。ここでは階級や国のことは関係ないと聞いているので」

「では、ハルトさん。あなたのお部屋は、この一号室です」

「わたしは四号室におりますから、用事があったら言ってください」

 一階に並んだドアを指差すと女性は二階に上がっていく。

 ついて行くと大きな食堂があった。

「こちらは、食堂です。来月から学校が始まると、平日の朝と昼はここで食事をします。ですが、今日は二十七日ですので、まだ四日間は使えません」

「では、それまでの食事は?」

「外に食べに出ていただくか、部屋にいる女生徒たちの食事かになります。これが、部屋の番号順に写真に身分などが乗っている名簿です」

「そうですか、あなたの食事も食べられますか?」

 ハルトは笑顔で女性に話しかける。

「ええ。お望みとあらば。ですが、学校が始まってしまえば、毎日の夕食は毎月二十八日までは、各部屋の生徒の持ち回りになります。夜の八時から九時の間はその日の決められた女生徒の部屋に行ってください。決まりですから」

「決まりですか……。それ以外の時間は?」

「どの部屋に行こうと勝手です。ご自由になさってください」

「わかりました。それと、私のライバルたちはもう来ていますか?」

「クルマス国の王子、サムキ・クルスさんは到着されましたが外出中です。もう一人の王子は到着が遅れます」

「そうですか、一年間も学校のようなところで、次期皇帝を選ぶなんて必要なんでしょうかね?」

「強国三カ国から次期皇帝と妃をこの中から選ぶ。そう決まってしまったのですから仕方ないですわ」

「わたしは皇帝なんて柄じゃないんですがね」

 ハルトは頭をかき、食堂のテーブルを見る。

「わたしはあなたに期待していますわ」

 耳元でライムが呟いた。

「そう……ですかね」

 ハルトは困ったような照れたような顔を浮かべる。

「下に参りましょう」

 ライムはもう階段を下りていた。

「そうだ、ライムさんに取り次いでいただいた、あの女の子はどの部屋ですか? お礼がしたい」

 ハルトは小走りに追いかけ階段を下りる。

「ああ、プラムですか? 十七号室です。一緒に参りましょう」

 ハルトとライムは二人で並び十七号室の前にくると、ライムがドアをノックする。

「はい。あ、おねえちゃん」

 先ほどの女の子が笑顔で顔をだすと、ハルトに気がつきやや緊張した顔になる。

「ハルトさん、紹介します。この子はプラム・プディングです」

「プディング? 姉妹で選ばれたのですか?」

「属する国が違います。元を辿れば同族なのと血縁関係が濃いので、この子はおねえちゃんとわたしのことを呼んでいるんです」

「ああ。そうですか、よろしく」

 ハルトが笑顔で手を差し出すと、プラムは少しモジモジとしながら、ややためらいつつ手を握り返した。

「よろしかったらお三人で夕食でもいかがですか?」

「お食事ですか?」

 プラムはその大きい瞳を何度も瞬きさせ驚き、ライムの顔を見る。

「ええ。喜んで。プラムもいいわね?」

「はい」

 ライムに促されプラムは短く返事をする。

「では、夕方六時部屋を訪ねます」

 ハルトは一号室の中に入る。

「家具ひと揃えとはバストイレか。キッチンはついてないんだな」

 ベットの端に腰を落とす。

「女性は二十八人。それぞれの部屋に夕食を食べに行く。めんどくさいねぇ」

 ハルトは目を閉じてベットに仰向けになる。

 十七号室では、ライムとプラムがテーブルでお茶を飲み話をしていた。

「おねえちゃん。ハルト公爵ってずいぶん軽そうな感じの人ね。とても公爵様には見えないわ」

「簡単に本当の顔は見せないわよ。ハルトさんはカスターズ公国の筆頭カスタード家の公爵、他の二人は竜国の王子とクルマス国の王子、格が違うわ」

「でも、ここでは家柄は関係ないんでしょ? それにわたしはクルマス国側からで、おねえちゃんは竜国の人間じゃない」

「それこそ、家柄は関係ないのよ。三人の中から皇帝が選ばれ、妃も選ばれる。あなたも努力しなさい」

「わたしはお父様が勝手に決めたから来ちゃったんだもん。おねえちゃんと一緒でなかったら断ってたわ」

「あなたも十六。もう、大人でしょう?」

「わたしは家のこと以外、何も知らないもん。おねえちゃんだって、まだ十八じゃない。それは国のことにかかわってるかも知れないけれど」

「じゃあ、大人になりなさい」

 ライムはカップを持つプラムの頭をなでる。

「五時半。もうこんな時間か……」

 ハルトは目覚めると時計を見てベットから起き出す。

 部屋の荷物には何も手をつけていない。

 服らしきメモの貼り付けられた箱を開け、シャワーを浴びに行った。

 トントン

 ハルトはドアをノックすると元気な声が聞こえた。

「はい。あ、ハルト様。ライムおねえちゃんは?」

 ドアから顔を出し、見回すがライムはいなかった。

「今から迎えに行くとこです。初めにプラムちゃんをと思いまして」

 ハルトはにこやかに話しかける。

「はい。では行きます」

(いきなり名前で呼ぶし、おねえちゃんの部屋のほうが近いのに。わたしを先に訪ねてくるなんて)

 内心納得ができないままハルトの後ろについて行く。

「はい。お待たせしました」

 四号室をノックするとすぐにライムは出てきた。

「では、お二人何かお好きなものはありますか?」

「いえ。お任せします」

 ハルトの問いに、ライムが答える。

 あまり、女性からは注文せず。男性のエスコートに任せる。

「では、焼き肉でも食べましょう!」

「焼き肉!」

 ライムとプラムは驚いた顔になる、どこかのレストランだと思っていたのだ。

「ええ、あまり格式ばった食事は好きではないものですから。お嫌ですか?」

「いえ、大丈夫です」

「はい」

 ハルトのざっくばらんな物言いにライムもプラムも驚いている。

 寮付きの馬車に乗り、一般市民の通う繁華街についた。

 道行く人は、貴族の馬車に圧倒され皆振り向いて見ている。

「ホントにこんなところで食べるんですか?」

 プラムは少し怖がった表情を浮かべ街を見渡す。

 彼女にしてみれば、野蛮な世界とも思えた。

「はい。こういう庶民的なところがいいんですよ」

 ハルトは笑いながら店に入っていく。

(女性をエスコートもしないなんて!)

 プラムは眉を吊り上げながらあとをついて行く。

 ライムは平然としている。

(やはり、カスタード公爵は考え方が波の貴族とは違うわね)

 むしろ、領主としての資質を評価している。

 ハルトは案内された席に座り、ビールを三つ注文すると、向かい合わせに座る二人にメニューを手渡してきた。

「お好きなものがあったら頼んでください。あ、ウエイターさん、カルビ三人前とロース四人前ね。ライス大盛り一つも」

 プラムは貴族の生活しか見ていないため、腹が立ち来たビールをがぶがぶと飲みだす。

「プラムちゃん。何も食べないで、いきなり飲むと酔いが回るよ」

 ハルトが笑いながらだが、やや困ったようにプラムに声をかける。

「いーえ。大丈夫です! おかわり」

 プラムはそう言うとおかわりもビールを飲み続ける。

「しょうの無い子ね。少しは控えなさい。この子は貴族の生活しかしてきてないんです」

 ライムはプラムをたしなめる。

「ああ、そんなに怒らないでください。お姫様」

「ハルト様はこんなところに、よく来るんですか?」

 少し、座った目つきでプラムは尋ねる。

「うん。来るね。貴族よりも平民のほうがずっと人口が多い。そんな人たちと笑って話をするにはこちらから飛びこんで行かなきゃならないのさ」

「ふーん」

 ハルトの言葉にプラムは解ったような解らないような顔つきで答えた。

「それと、俺のことはハルトでいいよ。寮でも階級は関係ないんだからさ」

「じゃあ、ハルト! さっきからなんでほとんど焼かないでお肉食べてんのよ! ほとんどレアじゃない!」

 プラムは箸につままれたほとんど赤い肉を見る。

「俺、レアが好きなんだよ」

「駄目よ、焼いて食べるお肉でしょう。もっとちゃんんと焼かなきゃ駄目よ!」

「きっと大丈夫だよ」

「いーえ駄目です!」

 プラムは席を立ちハルトの横に横に座ると、箸から肉を鉄板に置く。

「わたしが焼きますっ」

 プラムは肉を焼き始めた。

「プラムちゃん、もう少し焼かないくらいが俺好きだな」

「いいえ。ちゃんと焼かないと!」

「プラムちゃん」

 ハルトの声にプラム首を振ると、ハルトが両側の頬に手を当てながら、親指で目じりを下げる。

「キミは笑顔のほうが素敵だよ」

 にこやかに笑ったハルトの顔があった。

 ライムはおかしくて笑っている。

「わたしがどんな顔してようと勝手です!」

 気恥ずかしさで強い口調でプラムは言い返す。

「そんな言い方しないの。未来の旦那様かもしれないのよ」

 ライムは笑いながらプラムを見る。

「旦那様……」

「そう、プラムちゃんの旦那になるかも知れないんだぜ」

 プラムの呟きにハルトは軽快な口調で答える。

「……じゃあ。わたしはハルトって呼ぶから、プラムって呼んでください」

 プラムは少し考えると、そう言った。

 彼女にしてみれば、未来の旦那様かもしれない、軽い男に見えるが魅力のありそうなハルトに対し、対等な立場を要求している。

「よし、わかった。プラム。仲良くしような」

 手に頭をのせゆする。

 帰りの馬車の中、プラムはハルトに寄りかかり寝ていた。

「すみません。ハルトさん」

「いえ、気にしないで、プラムとなかよくなれたみたいですし」

「そうですね」

 ライムはプラムの寝顔を見ながらクスクス笑っている。

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