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2011年1月

2011年1月30日 (日)

ジェフリーズ・ラムフォード

 森の中で寝ていたはずなのに、起きてみたらベッドの上だった。きっとデーデキントが見つけ出してくれたのだ。よほどよく眠っていたのだろう、なんだかすっきりしている。

 「ジェフリーズ、よく寝たわね」

 お母様の声が聞こえた。振り返ると椅子に座りひざかけをかけたいつものお母様の姿だ。

 「お母様ごめんなさい。森の中で眠っちゃったんだ」

 「いいのよ、ジェフリーズ。森の中は気持ちよかったでしょう。デーデキントが連れてきてくれたのよ後でお礼を言いなさい」

 「はい」

 「でも、ジェフリーズ。明日は出かけてはだめよ。お父様がお見えになるのですからね」

 お父様といっても年に何回も会わない。この家には執事のデーデキントとコックさんがいるくらい。ここはそんなに人も多くないのに家ばかりが大きいんだ。

 でも、お父様の事は大好きだ、街に連れて行ってくれることもある。ここよりずっと大きなお屋敷に住んでいて、使用人もたくさんいて、年上のお兄様たちが住んでいるんだ。お兄様はやさしいけどそこで会った女の人には怖い顔で睨まれた。

 今はまだ使ってない暖炉の上にお父様とお母様の肖像画が飾ってある。二人とも幸せそうな顔をしている。ぼくはお母様の真っ赤な髪の毛が大好きだ。ぼくも赤毛だけど、お母様は特別。奇麗で暖かくて、やさしい香りがするんだ。

 この家では夕食を二人で食べる頃には二人だけ、コックもデーデキントも別の家で生活している。そうなると僕とお母様はまるで二人きりで生活しているようだ。お母様の体が弱いから森の家で生活するんだって言われたけれど、時々寂しそうに窓の外を眺めている。

 次の日の朝早く、お父様がやってきた。お母様も嬉しそうに出迎える。

 「そのまま楽にしていなさいだんだん寒くなってきた。どうらジェフリーズ大きくなったかな」

 「はい、お父様」

 「ようし、いい子だお母様の言うとことちゃんと聞くんだぞ」

 お父様は、お母様と僕にプレゼントを持ってきてくれた。おもちゃと本だ。勉強はデーデキントに習っているけどこれも面白そう。

 「ここへはしばらく居られるのですか?」

 「三日ほど泊まらせてもらうよ。街から珍しい食材も持ってきた。コックに腕を振るっともらうとしよう」

 今日はご馳走だ。色々なお肉やお野菜、ハーブもある。きっとお父様はお母様の体を考えて選んでくれたに違いない。

 お父様は僕に色々な国のお話を聞かせてくれた。あと、お父様が多くの山や土地を持っていてここは一番はずれの山にあるらしい。でも、ブドウの木や畑があってこの土地だけでも生活には困らないと言ってくれた。でも、僕はお母様と一緒にいられれば満足だ。

 「ソフィア、ジェフリーズも大きくなった。もうそろそろ家に連れて帰ってカントルに勉強を見させようと思う。デーデキントも優秀だが、他の子供たちに手がかからなくなってカントルも時間を持て余している。それに、家にも慣れさせたいしな」

 「ジェフリーズを連れて行ってしまうのですか。私はこの子が居なくなってしまうなんて考えられません」

 「ジェフリーズにとってもいい機会だ。屋敷の人間としてすごさせて、ゆくゆくはこの土地の主になるのに支障がないように教育もする必要がある」

 「私達には土地なんて要りませんただ二人で平和に暮らせれば幸せなんです」

 「お父様、僕もお母様と暮らせてば何も要らないよ。お母様を悲しませないで」

 「そうはいかないんだ、ジェフリーズ。お前も私の大事な息子だ。このまま森の中でいつまでも生活させるわけにはいかない」

 お母様は泣いていた。僕も泣きながらお父様にお話ししたけど、春になったら大きなお屋敷へ僕だけ行くことになってしまった。お母様はここに独りぼっちになってしまう。

 「ああ、ジェフリーズ。別れるなんて辛いけれどきちんと勉強して立派な大人になるのよ。お母様は一緒にいてあげられないけれど許してね」

 「この赤い髪があなたとお母様だけの大事な絆よ。この髪のせいで嫌な思いもするかもしれないけれど、お父様を恨んではだめよ」

 お父様が帰った後お母様はまた泣きながら僕に言ってくれた。この髪は僕とお母様だけのもの。

 5歳の春ラムフォード家のお屋敷に僕はやってきた。お母さんは泣いていたけれどしばらくの面倒をデーデキントに頼んで僕を見送ってくれた。僕もちょっぴり泣いたけど、年に何回かは戻ってきていいってお父様が言ってくれたので、今は楽しみだ。

 お屋敷に着くとその大きさにびっくりだ。今まで住んでいた家に比べて何倍も大きくて立派だった。何十人も住めそうな家、そしてその横にも家がずらりと並んでいる。

 家の中では、バーンズお兄様が出迎えてくれた。そして、その子供の12歳のウォルカスお兄さん、10歳のウイリアムお兄さんも一緒だった。二人とは一緒に遊んでもらったこともある。二人でお屋敷の中を案内してくれた。家の中の使用人の人たちは皆僕を歓迎してくれて、ソフィアの息子が帰ってきたぞ喜んでくれる。

 夕食の時間茶色の髪をした女の人が不機嫌で、みな暗い顔で食事をしている。

 「いまさらこの子を呼び戻してどうするつもりなんです!ラムフォード家の財産は渡しませんよ!」

 「アンナ、いまさら何を言うんだ。ジェフリーズも私の子供だちゃんと教育してやらなくてはいかん、それに財産の件は私が決める。余計な詮索をするんじゃない」

 「あの赤い髪の女が可愛くてラムフォード家を継がせるおつもりじゃありませんか?私はこの子が屋敷に帰ってくるのは反対だったんです。ずっと森の別荘に置いておけばよかったんですわ」

 「ラムフォード家を継ぐのはバーンズだ、歳は離れているがジェフリーズも成長すれば我が家の役に立ってくれる。そのための教育が必要だ」

 騒がしい夕食が終わり、まだお父様と茶色の髪女の人が話をする中、メイドさんと寝室へ行った。しばらくはデーデキントも居てくれるみたいだけれど、これからの身の回りはメイドのジェニファが見てくれる。

 「ジェフリーズお坊ちゃまも大変でしょうがジェニファが守りますから何でも言ってくださいね。私はお坊ちゃまが生まれた時におしめを替えたこともあるんですよ」

 「僕はここで生まれたの?」

 「ええ、奥様以外は皆喜んでいました。ソフィアの体が弱いのと奥様がこの家にいるのを反対されて森の別荘に行ってしまいましたが、ここの使用人はジェフリーズお坊ちゃまの味方です」

 茶色の髪の女の人を「お母様」と呼ぶことになった。はじめは呼びなれなかったけれど、段々となれていった。勉強もカントルや他のメイドに教えてもらい。お母様への手紙を書くのを楽しみにしている。ジェニファは字が読めるので、お母様からの手紙をジェニファに読んでもらったりしながら勉強していった。

 使用人の人たちがやさしくしてくれるので、使用人の家に行って遊んだりもした。ほとんどの人がお母様の事を知っていてやさしくしてくれると手紙に書いたら、とても嬉しいと僕の分も含めて色んな人宛に手紙が何通も来た。

 この屋敷に来て三年目の冬お母様は亡くなってしまった。お墓は森の家のそばに造られあたり一面が見渡せる場所に建っている。お花が咲くのが見えるところでよかった。お母様はお花が大好きだったから。

 デーデキントも帰ってきて僕の世話をしてくれている。ジェニファもそのままいてくれて、お母様がいない悲しさはあるけれど、ますます皆との距離が縮まった気がする。少しだけど、アンナお母様もやさしい言葉をかけてくれる。

 

 「ここで止めて!」

 「ジェフリーズ様なんですかこんな公園の横で」

 「いいからここで待っていて」

 「お嬢さん、きれいなお花ですね。僕がみんな買い取りましょう」

 「え、いいんですか?」

 「大丈夫!カゴごと買い取りましょう」

 「この公園にはよく来るの?お名前は?」

 「週に一度は来ています。名前はマリアです」

 「では、また来週会いましょう。お花をありがとう!」

 「ジェフリーズ様またお母様から小言を言われますよ。」

 「かまやしないよ、こうして街に出るのが好きなんだから」

 「好きなのは街ではなくさっきの女の子ではないのですか?もう17歳なのですから縁談話も来ているんですよ」

 「そんなものは興味がないね。さっきの赤毛の女性にペンダントでも送ろうかなぁ」

 「やぁ、こんにちは。また会えましたね」

 「先週の方。ラムフォード家の方ですよね?」

 「なぁんだばれていたのか。はい、ジェフリーズ・ラムフォードです」

 「領主様のご子息が私たちと同じところにいてはいけません立派なお屋敷があるのですから」

 「屋敷は僕にとって窮屈なんです。こうして街の人たちの暮らしを見ているほうが好きなんですよ。僕に皆の暮らしぶりを教えてください」

 こうして街に出てマリアと過ごす時間も長くなり、人々の暮らしぶりが解ってきた。ラムフォード家は他の土地の領主に比べ街の発展に気は配っているけれど、貴族意識が抜けていないらしい。市民のことはあまり顧みていないのだろう暮らしに困っている人も多いみたいだ。

 

 「マリア大丈夫かい?熱がありそうだよ?」

 「大丈夫です…」

 額に手をあててみると熱い。熱があるみたいだ。

 「大丈夫じゃないよ。熱があるじゃないか、医者に行こう」

 「医者のお薬は高くて買えません。家で休めば熱も下がります」

 「この前うちに医者が来た時に風邪が流行ってると言ってた。僕がいれば大丈夫だ、一緒に医者に行こう!」

 幸いマリアの風邪は大したことはないらしい。でも家族も風邪をひいているとのことなので医者に言って薬を多めに出してもらった。

 「先生、風邪が流行っているといってもそれほど街の人は来ていないようですが?」

 「ジェフリーズ様には不思議でしょうが、ここに来れるのはごく僅かの裕福な商人くらいです。多くの街の人は医者に来るお金がないんです。私も薬代がありますし、そうそう安く診察してあげるわけにはいかないんですよ」

 「先生。先生はこの街で一人の医者です。ラムフォード家の主治医でもあるのですから私の家の専属の医者になってください。そうして街の人にもできる限りの医療をしてほしいんです」

 「息子さんも勉強して帰ってこられたら、ここでそのまま医者を続ければいいんです。この街に医者が一人では少ないくらいですから」

 「私は構いませんが、領主様が何と言われるか…」

 「僕が説得して見せます!」

 「ジェフリーズ、言いたいことは解るが、なぜそこまで領民に手厚くしてやらなければいけないのだ。今まで通りでいいのではないか?」

 「お父様、これから先のことを考えて言っているのです。領民に病気が流行して街に人がいなくなったり寝込んでいてはその分街の活力が失われてしまいます」

 「それに、街の医者の先生の子供たちの留学費用も援助したというではありませんが、もっと街に貢献してもらいましょう。薬だって大量に買えばやすくなるでしょうし、他の親戚の領地で売ったり他の領主のところへ行って貿易をしましょう。今までのワインや農作物以外の収入があるに越したことはありません」

 「誰がそれをするんだ、薬に詳しいものは我が家にはいないぞ」

 「僕がやります!先生の息子たちの留学先のつてで薬の入手ルートを開拓します。我が家の領地の中にも薬草が生えているじゃないですか。薬草栽培を僕の土地でやらせてください」

 「判った。ただし、医者を専属にするのは面倒みるが薬の事業はお前の土地や人間でやるんだぞ」

 「ありがとうございます。お父様!」

 デーデキントと僕で医者の先生の子供たちのところへ行き相談した。はじめは驚いていたが、長男はもう留学も終わる時期だったので必要な薬一式や最先端の医療道具、薬の卸の店や生産地域など、ひと揃えの知識と道具を買って帰った。はじめはワインを売って薬を買っていたが、薬草の苗も入手して農家に栽培を依頼した。貿易により現金やラムフォード家の領地では手に入らないものも流通していった。都会から田舎への商品や情報の流通ルートにすることにより街に宿屋も多くなり全体的に活気が出てきた。

 ただひとつ問題があるマリアが結婚に応じてもらえないのだ。お父様は自分の手前反対しないがお母様は貴族と市民の結婚には反対している。デーデキントに相談してもボケたふりをするしまつだ。

2011年1月29日 (土)

『皇帝・妃の選びかた』①

 貴族階級と魔法で統治された世界があった。

 その世界は三つの強国と、それに属する数百の国で形成されており、小規模な紛争を抱えながらも、外見的な平和がもたらされていた。

 

「ここが寮か……。まさか領主になってまで学校に通うことになるとはな」

 背の高い、その身なり仕草に品をを漂わせる青年が門の前に立つ。

 門を開け歩いていると建物の中に入っていくと、入口に広間があり、若い女性が一人立っていた。

 まだ青年には気づかずに部屋の掃除をしている。

 その艶やかな服装やブラウンの長い髪に髪飾りから下働きの女ではないことがうかがえた。

「あの、すみません」

「はいっ。何でしょう?」

 声をかけられ驚いたように青年をややボーっとした目で見ていた。

「わたしの名前は、ハルト・カスタードと申します。寮監かどなたかいませんでしょうか?」

「お待ちください。姉を呼んできます!」

 そう言うと女の子は走って行って寮の中に入っていく。

(姉? 寮監の息女とは思えない身なりだが。まあいい、やはり可愛らしい顔や声をしていたな)

 ハルトと名乗った青年は、先ほどの女の子の顔を思い出しながらしばらくその場で待っていた。

「カスタード公爵様ですね。よくいらっしゃってくださいました。わたしは寮長のライム・プディングです」

 振り向くと呼びに行ってくれた女の子と同じような顔立ちや髪の色やをした女性が立っていた。

(さっきの女の子に良く似ている、こちらはやや厳しい目鼻立ちだな)

「はい。今日、この国につきました。わたしの荷物は着いているでしょうか?」

「ええ。先日着いております。寮の中もあわせてご案内いたします」

 ライムという名の女性の後ろからハルトはついて行く。

「わたしは、便宜上寮長をしていますが、この寮で生活し、学校もご一緒させていただきますわ。寮監は通いで来ている者なのです」

「そうですか、よろしくお願いします」

「ご存じかも知れませんが、男性はカスタード様を含め三名、女性はわたしも入れて二十八人です」

「はい。そうらしいですね。わたしのことはハルトと呼んでください。ここでは階級や国のことは関係ないと聞いているので」

「では、ハルトさん。あなたのお部屋は、この一号室です」

「わたしは四号室におりますから、用事があったら言ってください」

 一階に並んだドアを指差すと女性は二階に上がっていく。

 ついて行くと大きな食堂があった。

「こちらは、食堂です。来月から学校が始まると、平日の朝と昼はここで食事をします。ですが、今日は二十七日ですので、まだ四日間は使えません」

「では、それまでの食事は?」

「外に食べに出ていただくか、部屋にいる女生徒たちの食事かになります。これが、部屋の番号順に写真に身分などが乗っている名簿です」

「そうですか、あなたの食事も食べられますか?」

 ハルトは笑顔で女性に話しかける。

「ええ。お望みとあらば。ですが、学校が始まってしまえば、毎日の夕食は毎月二十八日までは、各部屋の生徒の持ち回りになります。夜の八時から九時の間はその日の決められた女生徒の部屋に行ってください。決まりですから」

「決まりですか……。それ以外の時間は?」

「どの部屋に行こうと勝手です。ご自由になさってください」

「わかりました。それと、私のライバルたちはもう来ていますか?」

「クルマス国の王子、サムキ・クルスさんは到着されましたが外出中です。もう一人の王子は到着が遅れます」

「そうですか、一年間も学校のようなところで、次期皇帝を選ぶなんて必要なんでしょうかね?」

「強国三カ国から次期皇帝と妃をこの中から選ぶ。そう決まってしまったのですから仕方ないですわ」

「わたしは皇帝なんて柄じゃないんですがね」

 ハルトは頭をかき、食堂のテーブルを見る。

「わたしはあなたに期待していますわ」

 耳元でライムが呟いた。

「そう……ですかね」

 ハルトは困ったような照れたような顔を浮かべる。

「下に参りましょう」

 ライムはもう階段を下りていた。

「そうだ、ライムさんに取り次いでいただいた、あの女の子はどの部屋ですか? お礼がしたい」

 ハルトは小走りに追いかけ階段を下りる。

「ああ、プラムですか? 十七号室です。一緒に参りましょう」

 ハルトとライムは二人で並び十七号室の前にくると、ライムがドアをノックする。

「はい。あ、おねえちゃん」

 先ほどの女の子が笑顔で顔をだすと、ハルトに気がつきやや緊張した顔になる。

「ハルトさん、紹介します。この子はプラム・プディングです」

「プディング? 姉妹で選ばれたのですか?」

「属する国が違います。元を辿れば同族なのと血縁関係が濃いので、この子はおねえちゃんとわたしのことを呼んでいるんです」

「ああ。そうですか、よろしく」

 ハルトが笑顔で手を差し出すと、プラムは少しモジモジとしながら、ややためらいつつ手を握り返した。

「よろしかったらお三人で夕食でもいかがですか?」

「お食事ですか?」

 プラムはその大きい瞳を何度も瞬きさせ驚き、ライムの顔を見る。

「ええ。喜んで。プラムもいいわね?」

「はい」

 ライムに促されプラムは短く返事をする。

「では、夕方六時部屋を訪ねます」

 ハルトは一号室の中に入る。

「家具ひと揃えとはバストイレか。キッチンはついてないんだな」

 ベットの端に腰を落とす。

「女性は二十八人。それぞれの部屋に夕食を食べに行く。めんどくさいねぇ」

 ハルトは目を閉じてベットに仰向けになる。

 十七号室では、ライムとプラムがテーブルでお茶を飲み話をしていた。

「おねえちゃん。ハルト公爵ってずいぶん軽そうな感じの人ね。とても公爵様には見えないわ」

「簡単に本当の顔は見せないわよ。ハルトさんはカスターズ公国の筆頭カスタード家の公爵、他の二人は竜国の王子とクルマス国の王子、格が違うわ」

「でも、ここでは家柄は関係ないんでしょ? それにわたしはクルマス国側からで、おねえちゃんは竜国の人間じゃない」

「それこそ、家柄は関係ないのよ。三人の中から皇帝が選ばれ、妃も選ばれる。あなたも努力しなさい」

「わたしはお父様が勝手に決めたから来ちゃったんだもん。おねえちゃんと一緒でなかったら断ってたわ」

「あなたも十六。もう、大人でしょう?」

「わたしは家のこと以外、何も知らないもん。おねえちゃんだって、まだ十八じゃない。それは国のことにかかわってるかも知れないけれど」

「じゃあ、大人になりなさい」

 ライムはカップを持つプラムの頭をなでる。

「五時半。もうこんな時間か……」

 ハルトは目覚めると時計を見てベットから起き出す。

 部屋の荷物には何も手をつけていない。

 服らしきメモの貼り付けられた箱を開け、シャワーを浴びに行った。

 トントン

 ハルトはドアをノックすると元気な声が聞こえた。

「はい。あ、ハルト様。ライムおねえちゃんは?」

 ドアから顔を出し、見回すがライムはいなかった。

「今から迎えに行くとこです。初めにプラムちゃんをと思いまして」

 ハルトはにこやかに話しかける。

「はい。では行きます」

(いきなり名前で呼ぶし、おねえちゃんの部屋のほうが近いのに。わたしを先に訪ねてくるなんて)

 内心納得ができないままハルトの後ろについて行く。

「はい。お待たせしました」

 四号室をノックするとすぐにライムは出てきた。

「では、お二人何かお好きなものはありますか?」

「いえ。お任せします」

 ハルトの問いに、ライムが答える。

 あまり、女性からは注文せず。男性のエスコートに任せる。

「では、焼き肉でも食べましょう!」

「焼き肉!」

 ライムとプラムは驚いた顔になる、どこかのレストランだと思っていたのだ。

「ええ、あまり格式ばった食事は好きではないものですから。お嫌ですか?」

「いえ、大丈夫です」

「はい」

 ハルトのざっくばらんな物言いにライムもプラムも驚いている。

 寮付きの馬車に乗り、一般市民の通う繁華街についた。

 道行く人は、貴族の馬車に圧倒され皆振り向いて見ている。

「ホントにこんなところで食べるんですか?」

 プラムは少し怖がった表情を浮かべ街を見渡す。

 彼女にしてみれば、野蛮な世界とも思えた。

「はい。こういう庶民的なところがいいんですよ」

 ハルトは笑いながら店に入っていく。

(女性をエスコートもしないなんて!)

 プラムは眉を吊り上げながらあとをついて行く。

 ライムは平然としている。

(やはり、カスタード公爵は考え方が波の貴族とは違うわね)

 むしろ、領主としての資質を評価している。

 ハルトは案内された席に座り、ビールを三つ注文すると、向かい合わせに座る二人にメニューを手渡してきた。

「お好きなものがあったら頼んでください。あ、ウエイターさん、カルビ三人前とロース四人前ね。ライス大盛り一つも」

 プラムは貴族の生活しか見ていないため、腹が立ち来たビールをがぶがぶと飲みだす。

「プラムちゃん。何も食べないで、いきなり飲むと酔いが回るよ」

 ハルトが笑いながらだが、やや困ったようにプラムに声をかける。

「いーえ。大丈夫です! おかわり」

 プラムはそう言うとおかわりもビールを飲み続ける。

「しょうの無い子ね。少しは控えなさい。この子は貴族の生活しかしてきてないんです」

 ライムはプラムをたしなめる。

「ああ、そんなに怒らないでください。お姫様」

「ハルト様はこんなところに、よく来るんですか?」

 少し、座った目つきでプラムは尋ねる。

「うん。来るね。貴族よりも平民のほうがずっと人口が多い。そんな人たちと笑って話をするにはこちらから飛びこんで行かなきゃならないのさ」

「ふーん」

 ハルトの言葉にプラムは解ったような解らないような顔つきで答えた。

「それと、俺のことはハルトでいいよ。寮でも階級は関係ないんだからさ」

「じゃあ、ハルト! さっきからなんでほとんど焼かないでお肉食べてんのよ! ほとんどレアじゃない!」

 プラムは箸につままれたほとんど赤い肉を見る。

「俺、レアが好きなんだよ」

「駄目よ、焼いて食べるお肉でしょう。もっとちゃんんと焼かなきゃ駄目よ!」

「きっと大丈夫だよ」

「いーえ駄目です!」

 プラムは席を立ちハルトの横に横に座ると、箸から肉を鉄板に置く。

「わたしが焼きますっ」

 プラムは肉を焼き始めた。

「プラムちゃん、もう少し焼かないくらいが俺好きだな」

「いいえ。ちゃんと焼かないと!」

「プラムちゃん」

 ハルトの声にプラム首を振ると、ハルトが両側の頬に手を当てながら、親指で目じりを下げる。

「キミは笑顔のほうが素敵だよ」

 にこやかに笑ったハルトの顔があった。

 ライムはおかしくて笑っている。

「わたしがどんな顔してようと勝手です!」

 気恥ずかしさで強い口調でプラムは言い返す。

「そんな言い方しないの。未来の旦那様かもしれないのよ」

 ライムは笑いながらプラムを見る。

「旦那様……」

「そう、プラムちゃんの旦那になるかも知れないんだぜ」

 プラムの呟きにハルトは軽快な口調で答える。

「……じゃあ。わたしはハルトって呼ぶから、プラムって呼んでください」

 プラムは少し考えると、そう言った。

 彼女にしてみれば、未来の旦那様かもしれない、軽い男に見えるが魅力のありそうなハルトに対し、対等な立場を要求している。

「よし、わかった。プラム。仲良くしような」

 手に頭をのせゆする。

 帰りの馬車の中、プラムはハルトに寄りかかり寝ていた。

「すみません。ハルトさん」

「いえ、気にしないで、プラムとなかよくなれたみたいですし」

「そうですね」

 ライムはプラムの寝顔を見ながらクスクス笑っている。

2011年1月27日 (木)

『現代用語の基礎知識 2011年版』

今日は、『現代用語の基礎知識』を買ってきました。

やっぱり、一般知識の政治・経済・社会などのヒントになればと思って(;;;´Д`)

だって、切られたくないもの。大事だもの。。。

そして、以前に『日本の論点』を買ってあります。

試験範囲は今年4月まで、考えてみると去年の事なんて忘れてますよね。

政治・経済・社会、そして、何より法改正^エ^。

6月に

の2011年版が出ますが、基礎的な知識は必要。

どうやって、情報収集するのか? <コ:彡つづく

-収穫祭-

 「ジョセフ様聞いてるんですか!」

 耳元で大きな声を出されれば聞こえるよ。家庭教師のカントル先生は色々な事は知ってるけど年のせいか口やかましいから困る。

 『あぁ聞いてますよ。もう、お昼だから勉強はもういいでしょ?』

 「なんてことです。他のラムフォード家の方々は皆熱心に勉強されてましたよ!」

 他の人間と一緒にされちゃたまらない。うちの一族の家庭教師をしてるから何かと親戚の人やお兄様と比較されて困る。それにしてもお腹が減った。

 「ジョセフ様、カントル先生、お昼の用意ができました」

 ちょうどいいところで、アンジェリーネが来てくれた。アンジェは僕と同い年の14歳、親子でうちの家で働いている。小さい頃は一緒に遊んでジョセフと呼んでくれたけど、今はジョセフ様になっちゃった。何か言いたげなカントル先生を置いて食堂へ行くとお父様とウォルカスお兄様がもう待っていた。

 「ジョセフ勉強は進んでいるか?カントル先生の言うことをちゃんと聞くんだぞ、ウォルカスだってウイリアムだってカントル先生に習って今では立派に我が家の役に立っているんだぞ」

 ウイリアムお兄様が長男、ウォルカスお兄様が次男で、僕は三番目。お兄様は二人ともお父様の代わりに家の仕事をしたりしている。僕だけ一人年が離れてるんだ。

 「今日の収穫祭にはお前も一緒に行くんだぞ。親戚や他の家の方々と顔を会わせておくのも必要だ」

 収穫祭には、この地方の人たちが集まってお祭りをする。でも、一般の農家の人とも話をするけれど、目的は他に家の人たちの社交辞令の場になっているらしい。ウォルカスお兄様が行ったらいろんな家のお嬢さんの踊りのお相手をさせられて疲れたとぼやいてたっけ。

 収穫祭は別の家の屋敷でやるので、お昼を食べたらもう服を着替えて出発するらしい。僕も窮屈な服に着替えて馬車に乗って出発だ。

 お屋敷につくと親戚、お父様の弟のジェフリーズ伯父さんがいた。ジェフリーズ伯父さんはお父様と歳が親子ほど離れてて僕に一番近い年の親戚になる。小さい頃から仲良しでいつも一緒に遊んでもらってた。僕はジェフリーズ伯父さんの赤い髪が好きだけど、本人は嫌いみたい。お父様の兄弟は皆茶色の髪の毛だけどジェフリーズ伯父さんだけは赤い髪をしている。

 「ジョセフ。カントル先生の授業はまじめに聞いてるか?口やかましいが聞いておいて損はないぞ」

 『うん、これからはそうするよ』

 「そういう答えが返ってくるってことはまじめに勉強してないんだな?」

 「お前だっていつかは兄貴の財産の一部をもらって独立するんだぞ」

 ジェフリーズ伯父さんは、肩ひじ張らず会話ができる。家の中では浮いてるけど一番頭がいいのはジェフリーズ伯父さんだってほかの親戚の伯父さんたちの話だ。

 夜の舞踏会では次々にいろんな家の女の子と合わされたり疲れた。知っている子もいたけれど、みんな言葉遣いも堅苦しいし、ここにいるだけでなんだかくらくらしてきた。

 「疲れただろう、ベランダの方に行こうか」

 ジェフリーズ伯父さんに救い出され僕はやっと休むことができた。窓の外を見ると街の人たちがお祭りをしている。アンジェリーネと一緒にお祭を過ごしたかったなと思う。小さい頃は家で働いている人と一緒に遊んだり、アンジェともピクニックに行ったりしたけれど、一緒にご飯を食べていても僕だけ贅沢な食べ物でアンジェたちは堅いパンやベーコンで不思議だった。アンジェは違う食べ物で平気だって言うけれど、二人で出かけたときには半分こして食べたっけ。ここで出ている食べ物や飲み物と違うものを今日も食べてるんじゃないかと思うと少し悲しくなった。

 『ジェフリーズ伯父さん、僕たちは贅沢をしてうちで働いている人たちや広場の人たちは同じものが食べられないの?』

 「ジョセフ、治めるものや一家の使用人と主人の違いだよ。俺だってあっち側にいたかもしれなかったんだ…」

 それ以上は言わなかったけれどジェフリーズ伯父さんも悲しそうだった。

 夜遅く帰ってきたら。家の人たちがまだ待っていてくれた。お父様やお兄様達は何か話しかけてたけど僕はアンジェリーネを探した。

 「ジョセフ様、お帰りなさいませ」

 『アンジェ、お土産だよ』

 僕は上等なお菓子を見つくろってポケットに忍ばせて帰って来ていた。アンジェに渡したかったんだ。

 アンジェは断ろうとしたが強引に渡して自分の部屋に帰ろうとして、ジェフリーズ伯父さんに背中を突っつかれた。

 「なかなかやるじゃないか」

 「お前がごそごそしているのを隠すのは大変だったんだぞ」

 ジェフリーズ伯父さんにはお見通しだったらしい。でも、なんだか味方のような気がして嬉しかった。

 服を脱ぎ捨ててベットに飛び込んだ。ウトウトとするとすぐに眠ってしまった。

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